かく、無明《まよい》の心を解脱して、苦を滅し尽くした境地が、滅諦《めったい》すなわち涅槃です。あの「いろは[#「いろは」は太字]」歌[#「歌」は太字]でいえば、「あさきゆめみじ、ゑひもせず」という最後の一句は、「寂滅為楽《じゃくめついらく》」という「涅槃《ねはん》の世界」をいったものです。「あさきゆめみじ」とは、あさはかな夢をみないということです。「ゑひもせず」とは、無明の酒に酔わされぬということです。つまり「酔生夢死」をしないということで、つまり涅槃《さとり》の世界に安住するその気持を歌ったもので、ボンヤリ一生を送らないということです。
あの謡曲の「三井寺」や、長唄《ながうた》の「娘|道成寺[#「娘|道成寺」は太字]《どうじょうじ》」の一節に、
「鐘にうらみが数々ござる。初夜の鐘をつく時は、諸行無常と響くなり。後夜の鐘をつく時は、是生滅法《ぜしょうめっぽう》と響くなり。晨朝《じんじょう》は生滅滅已《しょうめつめつい》、入相《いりあい》は寂滅為楽《じゃくめついらく》と響くなり。聞いて驚く人もなし。われも後生の雲はれて、真如《しんにょ》の月を眺《なが》めあかさん」
とありますが、「初
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