て」人生を眺めなければなりません。自己の永遠の生命を信ずる者は、「不生不滅」です。そこには生死はありません。生死を達観して、人生永遠の生命[#「永遠の生命」は太字]に目覚《めざ》めることが、なんといってもいちばん大切です。肚《はら》ができたというのは、所詮この境地を指していったものです。いまや世界は共同の運命を自覚して一体となりつつあります。世界が真に一つの世界になりつつあるのです。松陰の出た明治維新当時と、今日の日本とは、その世界的地位において、たいへんなひらき[#「ひらき」に傍点]があります。しかし、わが日本民族が真に生くる根本的態度についてはなんら変りないと存じます。私どもは永遠の不朽の生命を深く信ずることによって、あくまでわれらに課せられた世界的使命たる、平和な文化国家の創造のために邁進《まいしん》したいと思うのであります。
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第五講 空に徹するもの
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是[#(ノ)]故[#(ニ)]空[#(ノ)]中[#(ニハ)]無[#(ク)][#レ]色[#(モ)]。
無[#(ク)][#二]受想行識[#(モ)][#一]。
無[#(ク)][#二]眼耳鼻舌身意[#(モ)][#一]。
無[#(ク)][#二]色声香味触法[#(モ)][#一]。
無[#(ク)][#二]眼界[#(モ)][#一]。
乃至無[#(シ)][#二]意識界[#(モ)][#一]。
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新緑の世界[#「新緑の世界」は太字] いつのまにか花の春も去って、若葉青葉に燃ゆる、すがすがしい新緑の世界になりました。武蔵野に住む私どもにとっては、きょうこのごろが一年じゅうでいちばん恵まれた時候です。ところで、この新緑五月のころになると、いつも私どもの頭に浮かんでくるのは、あの有名な、
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眼には青葉山ほととぎす初鰹《はつがつお》
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という句です。説明なしでも、もはや、日本人ならば何人にも十分にわかる句でありますが、これといっしょに新緑のころになると、いつも私の思い起こす句は、あの
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衣|更《が》え手につく藍《あい》の匂《にお》いかな
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という句です。これは衣更えの、新しい、すがすがしい気分を、最も巧みに表わしていることば
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