諏訪湖畔冬の生活
島木赤彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蓼科山《たてしなやま》となり、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)上下|睫毛《まつげ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+累」、第3水準1−86−7]《かんじき》
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 富士火山脈が信濃に入つて、八ヶ岳となり、蓼科山《たてしなやま》となり、霧ヶ峰となり、その末端が大小の丘陵となつて諏訪湖へ落ちる。その傾斜の最も低い所に私の村落がある。傾斜地であるから、家々石垣を築き、僅かに地を平《な》らして宅地とする。最高所の家は丘陵の上にあり、最底所の家は湖水に沿ひ、其の間の勾配に、百戸足らずの民家が散在してゐるのである。家は茅葺か板葺である。日用品小売店が今年まで二戸あつたが、最近三戸に殖えた。その他は皆純粋の農家である。
 山から丘陵、丘陵から村落へとつづく木立が、多くは落葉樹であるから、冬に入ると、傾斜の全面が皆露はになつて、湖水から反射する夕日の光が、この村落を
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