して、室内を照す電灯の珠《たま》が頻に揺れました。
[#7字下げ]五[#「五」は中見出し]
皆さん。私の怪談の本筋はこれで終りました。申す迄もなく信之が発狂したのは、単に沢が、怖しい姿の赤ん坊に変って居たということばかりではなく、実は、信之は暴風雨《あらし》に乗じて友江さんを絞殺し、縊死《いし》したように見せかけて置いたのでして、その為に起った良心の苛責がその主要な原因となったのでした。
さて、皆さんは、恐らく、この怪談の真相を御ききになりたいだろうと思いますから、簡単に説明して置きます。この怪談こそは、冒険心に富んだ私と妻との書いた狂言に外ならぬのでした。もはや御察しのことと思いますが、信之の心を奪った女中の沢は、私の妻だったのです。私たちは、是非とも、友江さんを救いたいと思って、種々取り調べた結果、友江さんが黴毒にかかったことや女中が度々出かわることをきき出しました。そこで妻は女中となって住みこみましたが、最早やその頃、友江さんの病気は可なりに進んで居ました。友江さんを盗み出して治療するのは訳のないことですが、何とかして、信之に、十分悔悟させてやりたいと思ったものですから、
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