したので、令嬢は遠藤博士の書斎へ私たちを案内して顕微鏡を出してくれました。令嬢が去ると、
「兄さん、まずこの先生の指の爪の間についていた毛を顕微鏡にかけてください」
 と俊夫君が申しましたので、私は、さっそく板ガラスにその毛を載せて顕微鏡下に置きました。見ると図に示すごとき土筆《つくし》のような形をした毛でして、私は今まで一度もこんな毛を見たことがありません。
[#毛の顕微鏡下の図(fig45957_01.png)入る]
「俊夫君、僕には分からぬ、見てくれ」
 と私は申しました。
 俊夫君はしばらく見ていましたが、やがてにこりと笑いました。
「分かったかい?」
 と私は聞きました。
「分かったとも、蝙蝠《こうもり》の毛だよ※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
「え? 蝙蝠?」
 小田刑事と私は思わずいっしょに叫びました。死骸の手に蝙蝠の毛※[#感嘆符二つ、1−8−75] さて、これは何事を意味するでしょう?

   怪しい電話

 俊夫君は、さらに私に向かって遠藤博士の死体から抜き取った髭と、ベッドの上に落ちていた毛とを、顕微鏡にかけてくれと申しました。
[#二本の毛の顕微鏡下の図(fi
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