も意外のことに呆気《あっけ》にとられました。
「先生が殺されなさってから、少なくとも三日はたっています」
「何?」
と白井刑事。
「ははは、そんなにびっくりしなくてもよろしいですよ。だから、ゆうべ帰った信清さんが殺すはずはないでしょう」
「その証拠は?」
と白井刑事は息をはずませて言いました。すると、俊夫君はますます落ちついて、
「あるどころか、僕は犯人も知っています」
と叫びました。令嬢と書生は一生懸命に俊夫君の顔を見つめました。
「誰?」
と白井刑事。
「皆よく聞いてください。遠藤先生を殺したのは、髭のない、かすれた声の男で、冬は蝙蝠《こうもり》の皮をつなぎ合わして作った襟巻をしています」
「まあ、それなら私の叔父です。叔父は朝鮮にいるはずですのに※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
と令嬢は叫びました。
この時そばにいた書生の斎藤は、身を翻して逃げだしました。
「それッ」と俊夫君が指をさしだしたので、私は躍りかかって書生を捕まえると、彼は死に物狂いで抵抗しました。
「白井さん、早く斎藤に手錠をかけてください、斎藤は共犯者です」
白井刑事は、どきまぎしながらも、とにか
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