んだのであった。
女はニューヨークのある富豪の若い未亡人であった。若い未亡人はとかく金が要るものであると見えて、彼女も困った末に大切な宝石を手ばなすとて、グレージーの店をたずねたのである。それが二人の相識る機会となり、グレージーは女と宝石とにぞっこん惚れこんで、彼女の宝石をどしどし買い込んだのである。
しかし、宝石はどこの家にも無数にある訳ではない。売ってしまえばなくなるのは当然のことであって、とうとう二人は変な計画をたてたのである。即ち彼は彼女に宝石を盗むことを教え、彼女の持って来た宝石をどしどし買うのであった。その頃富豪の会合の席上で、宝石が度々紛失したが、とうとうその原因は知れないですんだ。
男の恋はだんだん深くなって行った。女は始めはまんざらにくいとも思わなかったが、秘密を知られていると、何だか空おそろしいようになって、男をきらうようになった。しかし、もはやどうすることも出来なかった。そうして、だんだん深みへはいって行くより外はなかった。仕方がないから、女も、男を非常に愛しているように見せかけたのである。
とうとう、男はもう我慢がし切れなくなって、二人で駈落《かけおち》
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