ているのは、実は私の後妻の骨で御座います。先妻は一年半ばかり前になくなりましたが、それ以後私の家には不幸が続き、とうとう後妻にも死なれ、私までがこうした不具になったので御座います。そうして、これらの不幸や災難はみんな先妻の亡霊の祟りだったのです。いや、こういうと、あなたは私の迷信を御笑いになるかも知れませんが、だんだん御話をすれば御わかり下さるだろうと思います。実は先妻は自然な死に方をしたのでなく、自殺して相果てたので御座います。
昔から女の執念は恐しいものだと思いましたが、こうも極端なものだということは過去四十二年間夢にも思わなかったので御座います。彼女の自殺の原因はやはり嫉妬に外なりませんでした。私が他に女を拵えたのを憤って日本刀で頸をかき切って死んだのです。私は彼女の家に養子に迎えられたものですが結婚後二年ほど過ぎると両親が相前後して死に、私たち二人きりの身うちとなりました。私たちの間に子供がありませんでしたが、それが彼女のヒステリーを一層重くならしめた原因だろうと思います。元来彼女は、一口にいえば醜婦といった方がよく、はじめ私は彼女との縁組に不服でしたが種々《いろいろ》の深い
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