いう意志でありましても、私さえ勇敢に打ちあけて居《お》りましたら、こうした遣瀬《やるせ》ない悲哀に沈まないでよかったものをと、かえすがえすも私の弱い心を恨まずに居《お》られません。その私の弱い心が、あなたにまで深い禍《わざわい》を及ぼすに至ったかと思うと、まことに穴があったら、はいりたい心地が致します。両親を恨むのは勿体《もったい》ないことで御座いますが、両親から一切を秘密にせよと勧められて、ついつい気遅れのしたのも事実で御座います。然し、又とない良縁を喜ぶのあまり、秘密にすることを強《し》いた両親の心にも私は同情しないでは居《お》られません。まったく私の秘密は私が若《も》し大胆に振舞いさえしたならば恐らく当分の間は発見されずに過すことが出来たであろうと思います。そうしてそのうちに私たちの間に、愛らしい子供が出来ましたならば、たといその秘密が暴露されても、必ず、あなたは私をお許し下さるだろうと思います。実際、そう考えたればこそ、心の中では済まぬ済まぬと思いながら、つい見合いまですましてしまい、それから話が急に進んで、忙《せわ》しい結婚準備に追われ、そのまま引き摺《ず》られるようにして、
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