たわ》ものが生れて来るものとは限りますまいから、さほど心配するには及ぶまいかと思います。秘密を包んで持って居る間は、少しのことでも心配の種となりますが、秘密を打あけて了解を得た暁は、むかしの取越苦労をむしろ笑いたいような気になるものです。二人で二つの眼しかないということは悲しいといえば悲しいことですが、お互に外観はちっとも健康眼に変らないのですから、あなたが承知して下さった以上、私は喜んで一生涯御そばに暮させて頂きます。両親はもとより望んで居た御縁で御座いますから、今こうして、あなたが御不自由の身とわかっても、同情こそすれ、少しの不愉快をも感じないで、私の帰ることに同意してくれました。況《いわ》んや、こちらにも同じような欠点があるのを、潔く貰ってやると仰《おっ》しゃる御心には、涙を流して感謝致して居るので御座います。
 まったく、私の心は晴々と致しました。婚約が成立って以来、一日として安らかな日を送ったことのない私は、今日はじめて楽しい心になりました。でも、こんど御目にかかるとき、私はどんな思いをするでありましょうか。何だか御目にかかるのが恥かしいような気がしてなりません。でも、私は勇
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