ある時、八九郎は、原因不明の熱病にかかった。三日三晩眠りつづけて目がさめた時、彼は、
「鮒《ふな》じゃ、鮒じゃ」
と叫んだ。母親はお腹がすいたためであろうと思い、早速鮒を煮て持って行くと、
「さなきだにおもきが上のさよ衣《ごろも》」
こういって、彼は蒲団《ふとん》をはねのけたので、母親は、熱病のために彼が、高師直になったことを知ったのである。
高師直の状態が一ヶ月ほど過ぎると彼は再び大星由良之助になった。そうして自分が高師直の時に行ったことを何一つ記憶していなかった。同様に、高師直の時には、大星由良之助の時に行ったことを少しも覚えておらなかった。
大星の状態が三週間ほど続くと、又もや、彼は高師直になった。そうして二週間の後、更に大星由良之助になった。
それから、十日の後、高師直
同じく八日の後、大星由良之助
同じく七日半の後、高師直
同じく七日の後、大星由良之助
…………………………
…………………………
同じく三日の後、高師直
同じく二日二十時間の後、大星由良之助
…………………………
…………………………
だんだん、第一人格から第二人格へ第二人格から
前へ
次へ
全11ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング