待った。
やがて福間警部につれられてはいって来たのは二十四五の、顔の長い、髪の毛の房々とした青年だった。毛利先生は何思ったか福間警部を別室に退《しりぞ》かせて、緑川に犯行の模様を語らせた。それは、福間警部が自動車の中で告げたことゝ少しも変らなかった。
「それでは、この机の前で、その時の北沢さんの模様をやって見せて下さい」
と、毛利先生は立ち上って、自分の腰かけて居た椅子を緑川に与え、室の隅にあった薄縁《うすべり》をもって来て床に敷かれた。
緑川はおそる/\椅子に腰かけた。
「さあ、眼をつぶって微睡して居る様子をして下さい。僕がその時のあなたの役をつとめます。よろしいか。そら、ドンとピストルを打った。そこで北沢さんはどうしましたか」
「何しろ興奮して居たから、こまかい動作はよく覚えて居りません。たしか、こういう風に立ち上ったと思います。それから、たしか身体を、こう捩《ね》じて、下へたおれ、こう言う風に横《よこた》わりました」
こう言って一々その動作を示した。
「宜《よろ》しい。恐入りますが、もう一度やって見て下さいませんか」
更に再び実験が行われた。
「横わった時の姿はそれに変
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