っていたのですから、私は、士官学校の入学試験準備をしました。試合のときにあがるような性分では、立派な軍人になれない訳ですが、その時は別にそんな深い考をめぐらさないで、軍人を志望したのです。果して、私は、この私の性分が祟って軍人になることが出来ませんでしたが、今になって見れば、軍人になっておらなくってよかったと思います。軍縮とか何とかいってさわがれている時節で、どうせ碌な人間にはなれていなかっただろうと思うと、まったく世の中は、何が幸福になるかわかりません。
 卒業後はかなりに勉強して、自分でも入学出来る自信を持つに至りました。ところがいよいよ入学試験がはじまると、私は、意外にも体格検査で不合格の憂目を見ることになりました。しかもそれがまたまったく意外な原因でありまして、いかにもくやしくてなりませんでした。
 それもその筈です、私が不合格となった原因は、私の後頭部にある二銭銅貨大の禿だったのです。
 いや、お笑いになるのも無理はありませんよ。何と馬鹿々々しい原因ではありませんか。士官学校の入学試験の規則に、禿のあるものは合格させぬとでもあったのか知れませんが、たといそういう規則があったと
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