どうした原因でこの立派な身体の持主が二度も体格検査に合格しなかったか、ききたくてなりませんでした。
 で、私は、お差支えがなかったら、不合格になられた顛末をお話し下さるように懇望しました。
「そうですねえ」と藤岡さんはいいました。「あなたは小説をお書きになりますから、一つその種を供給しますかな」
 こういって、藤岡さんは次のごとく語りました。

       二

 まったく、私は後覧のとおり[#「後覧のとおり」はママ]、頑健でして、今日まで、これという病気をしたことがないのでした。中学時代も非常に運動に熱心でして、庭球の選手をしておりましたが、どうした訳か、正式の試合となると、あたり[#「あたり」に傍点]が悪いので、いつも「中堅」ぐらいで暮したのです。一口に言うと「あがる」とでも申しますか、ふだんは誰にも負けないのですが、あらたまった場所へ出ると、心臓の鼓動がはげしくなって、汗がにじみ出て、どうにも落つきがなくなるのでした。
 でも、度々試合をした結果、だんだんそういうことはなくなったのですが、とうとう大将組にはいることが出来ずに卒業することになりました。
 かねて軍人になりたいと思
前へ 次へ
全8ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング