べき律動性の運動を迅速に行うのであります。
さて然《しか》らば、どういう訳で水銀球が、このように生物のような運動をするかと申しますと、すべて液体は、外物と触れて居るその境界面に一種の力をあらわすもので、通常これを表面張力と申して居《お》ります。液体の内部では、凡《すべ》ての分子が上下左右前後から、同じ力で牽《ひ》かれて居《お》りますけれど、液の表面におきましては、其処《そこ》にある分子は、裏側からは液体の分子によって牽かれ、外側からはその触れて居る物質の分子によって牽かれます。水の上に油を滴《た》らすとき、油が水の上に拡がるのは、水の表面張力が油のそれよりも大きいからです。又水銀を水の中に滴らすと水銀が球形を呈して居るのは、水銀の表面張力が水のそれよりも大きいからです。そこで今仮りに、その水が水銀に接して居《お》る一部分の張力を水銀よりも強からしめるか、あるいはその反対に水銀の張力を減少せしめたならば、弱い部分は強い部分に較べて縮むことが少く、水銀球は歪みます。前述の人工アメーバに就て言うならば、重クロム酸加里と水銀とが、硝酸の溶液中で触れ合うと、その部分にクロム酸水銀と称する物質が
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