出来上っても、それを家兎の大静脈と大動脈とに結びつけるのが難中の至難事でした。始めは鋼鉄管と血管とを直接カットグートと称する糸で結びつけましたが、鋼鉄では融通がききませんから、後には一定の硬さを有するゴム管をその中間に挟むことに致しました。然《しか》しそれでも、度々、圧力が平等に調節されないで、つなぎ目が口を開き、あっという間に出血して家兎を死なせました。
ことに手術上不快な現象と見るべきものは、血液の凝固することです。御承知のとおり血液は、血管の外に出ると直ちに凝固しますが、この凝血の一片でも血中に送りこまれると、小さな血管の栓塞《せんさい》を起して組織を壊疽《えそ》に陥れますから、どうしても血液の凝固を妨げる工夫をするより外に道はありません。そこで私は、かの蛙の口部から取ったヒルジンと称する物質を使用して凝固を防ぎ、手術を行うことにしました。然し手術は無事に済んでも、後の大血管とゴム管との接触部の内側《ないそく》に凝血が起り易く、やはり度々失敗を重ねましたが、活栓を速く動かすことにすれば、凝固は起らぬことを経験して、人工肺臓の工夫が成ると共に、この難関を切り抜けることが出来たので
前へ
次へ
全47ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング