ありますが、若し肺臓細胞の全部が窒素固定に従事したならば、それだけ位の栄養分は容易に作りあげるだろうと考えます。だから人工心臓の発明を完成し、それに附着する人工肺臓によって肺臓の瓦斯交換機能を代用せしめたならば、人間の食物を大いに軽減することが出来、なお進んで研究して行ったならば、或は人間は食物なしで生きて行けるようになるかも知れません。……などと私はその当時空想して、一日も早く大学を卒業し、人工心臓の発明に従事しようと思いました。

       六

 愈々《いよいよ》大学を卒業するなり私は生理学教室に入れてもらい、主任教授の許可を得て、人工心臓の研究に取りかかりました。私は事情あって、在学中に結婚しましたが、自宅から大学へ通う時間が惜しいので、主任教授の許可を得て、教室内の一室に夫婦で止宿《ししゅく》させて貰いました。妻も私の研究に非常に興味を持ち、私の助手として働いてくれました。私たちは朝|夙《はや》くから夜|晩《おそ》くまで働きました。市中とはいい乍ら、広い大学の構内の夜は森閑として、天井の高い研究室に反射する瓦斯灯の光は、何となく物寂しさを覚えしめましたが、実験動物を中に挟
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