ガス》交換であります。即ち全身を流れて炭酸瓦斯を含んで居る静脈血は、心臓から肺に送られて炭酸瓦斯を捨て、外気の酸素を取って動脈血となり心臓に返って全身に送られます。ですから、人工心臓を作ると同時に静脈血炭酸瓦斯を吸収又は発散し、同時に酸素を与える装置を附けたならば、もはや肺臓は不用の道具となってしまいます。そうすれば肺臓は如何に結核に冒されようが、何の痛痒《つうよう》も感じません。従って、肺結核問題はたちどころに解決されてしまいます。ことに人工心臓に、いわば人工肺臓を附着せしめて置くときは、人工心臓を人体に備えつける際に、その手術が非常に簡単になる訳ですから、まさに一挙両得というべきであります。
が、人工心臓に人工肺臓を附着せしめて、肺臓を瓦斯交換の仕事から解放するときは、ここに一種の珍らしい現象が起るであろうと私は考えたのであります。それは何であるかというに、若し肺臓の細胞を瓦斯交換の仕事から解放したならば、恐らく人間の食物を非常に節減出来るだろうということです。従って、人工心臓の問題は、単に疾病の悩みから人間を救うばかりでなく、場合によれば、食物問題の悩みからも人間を救い、凡ての
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