ました。それは申すまでもなく肺結核であります。肺結核なるものは結核菌のみでは生じ難く、人間の体質が、結核菌の繁殖に都合よくなったときに発生するのでありまして、而も肺結核の起り易い体質は、人類文化発達の結果生ぜしめられるものでありますから、肺結核は要するに人類文化に対する一種の天の皮肉と見做《みな》すことが出来ます。その証拠には、現代の医学は結核に対して何の権威を持ちません。権威どころか、荒れ狂う姿を呆然として袖手《しゅうしゅ》傍観《ぼうかん》して居るという有様です。医師にとっては或は尊い飯櫃《めしびつ》かも知れませんが、患者こそいい迷惑です。
そこで、医学に志すものは、誰しも、結核の治療ということについて思考をめぐらします。私もやはりその一|人《にん》でしたが、この間題も、人工心臓の発明によって直ちに解決がつくことを知りました。私は前にすべての疾病治療法の解決は人工心臓によって為し遂げられると申しましたから、肺結核も当然その中にはいる筈ですが、肺臓という機関は人工心臓と特殊の関係を持って居ますから、特にここで申し上げようと思うのです。
肺臓の主要なる機能は申すまでもなく血液の瓦斯《
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