かりあけておりました。
来訪者というのは、俊夫君が、「Pのおじさん」と呼ぶ、警視庁の小田刑事でした。私たちは思わず顔を見合わせました。
「Pのおじさん!」
と俊夫君は、小田刑事が席に着くなり言いました。
「小石川区春日町の殺人事件で来てくださったでしょう?」
「え? どうして君は知っている? では、君の方へも通知があったか?」
と、小田刑事は驚いて言いました。
「別に通知というほどのことではないのですが、ちょっと、変なことがありました。それはあとでお話ししますから、まず、用件を聞かせてください」
小田刑事は語りました。
「ゆうべ、僕は宿直だったが、二時頃に電話がかかって、春日町一丁目の空家に人が殺されているから、すぐ出張してくれというのだよ。そのまま先方は電話を切ってしまったので、たとい悪戯《いたずら》であるとしても、捨ててはおけぬので、二人の部下をつれて、行ってみると果たして空家があり、中へ入ると、やっぱり本当だったよ」
「殺されたのは誰です?」
「殺されたのは、T劇場の女優川上糸子さ」
「ええッ、川上糸子が?」
俊夫君の驚いたのも無理はありません。川上糸子はかつて高価な首
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