、その有名な人を殺した犯人だよ。分かったかい。だから、この俺を捕まえれば、君は世界一の名探偵になれるということだ。だが、おそらく、君の腕じゃ俺を捕まえることはむずかしかろう」
「何?」
「まあ、そのように憤慨するなよ。もう四五時間のうちに、君のところへ、その殺人事件の報告が行くよ。そうしたら、この俺を一生懸命に捜しにかかるんだよ。分かったかい、しっかりやれよ。じゃ、さようなら」
こう言って、先方の男は電話を切ってしまいました。
二
俊夫君は、このからかい半分の電話をも、真面目に解釈して、すぐさま、中央局に電話をかけ、今の電話がどこからかかってきたかを尋ねました。するとそれは、「小石川、八八二九」だと分かりましたので、すぐさま、その番号を呼びだしました。
が、どうしても通じませんでした。
そこで、今度は、その番号の持ち主が誰であるかを検《しら》べました。すると、それは小石川区春日町二丁目の「近藤つね」という美容術師であることが分かりました。
「とにかく、根気よく呼びだしてみよう」
こう言って俊夫君は、約五分おきに呼びだしました。そうしておよそ二時間を経た午前三時十
前へ
次へ
全44ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング