す」
俊夫君は、皆さんもご承知のとおり、いったん言いだしたらけっしてあとへは引きません。また、俊夫君が伊豆山までわざわざ出かけるについては、何か目的があるに違いありません。で、私たちは、小田さんに別れをつげて東京駅に向かいました。
小田さんに別れるとき、俊夫君は、
「僕が伊豆山へ行くということを、熱海の警察へ話しておいてください」
と言いました。
二
冬とはいえ、風がなく、空は麗《うら》らかに晴れ渡って、まるで春のような暖かい日でありました。けれども、汽車の窓から見る山野の色は、さすがに荒涼たるもので、ところどころに小家のように積んである新藁《しんわら》の姿は、遠山《とおやま》の雪とともにさびしい景色の一つであります。
久しぶりの旅行なので、俊夫君は窓の方を向いて、移りゆく風景を、珍しそうに眺めておりました。
大船駅を過ぎて、相模の海が見えるあたりは、東海道線のうちでも絶勝の一つに数えられます。源実朝は、
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箱根路をわが越え来れば伊豆の海や
沖の小島に浪の寄る見ゆ
[#ここで字下げ終わり]
という名吟《めいぎん》を残しま
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