は、果たして彼ら誘拐団の本意であるかどうか疑わしいと思います。
……が、それはとにかく、これからすぐ熱海警察署へ電話をかけ、相州屋《そうしゅうや》の川上糸子を監視して逃がさぬよう告げてください。僕はこれから、兄さんと二人で伊豆山《いずさん》へ行き、その糸子のにせ物に会ってこようと思います」
この意外な言葉に、私はもちろん、小田さんもいささかびっくりしました。
「俊夫君、本当に伊豆山へ行くつもりか」
と、私は尋ねかえしました。
「そうよ、兄さん。僕は久しぶりに旅行がしたくなった。これからすぐ東京駅へ行こう。今夜は帰れないかもしれないから、うちへ電話をかけておいてくれ」
「こちらは、どういう手配をしたらいいだろうか」
と、小田さんは尋ねました。
「糸子のにせ物が相州屋にいる間は、誘拐団は逃げはしますまい」
「君、本当に、それは糸子のにせ物だろうか」
「にせ物でなくて、本物だったら何も心配するには及びません。先刻、近藤方での話によると、四五日前に川上糸子と同じ年輩の女優らしい女が、美容術を受けに来て、色々糸子のことを尋ねたということですから、伊豆山にいるのは、多分その女だろうと思いま
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