ません。
「どっちがにせ物だろうか」
と、小田刑事は俊夫君に向かって尋ねました。
「むろん、いま相州屋に寝ているのがにせ物です」
と、俊夫君はきっぱり答えました。
「え? どうして分かる?」
「死に顔や寝顔まで、にせ物はまねことができぬはずです。Pのおじさんは、春日町の空家にいた女の死に顔を見て、たしかに川上糸子だと判断なさったでしょう。だから、それが本当の川上糸子だったのです。
それに、悪漢たちは、川上糸子が死んだということを、警察の人に見せたかったのです。そうして、さらにその死骸を隠して、わざと事件を紛糾させたかったのです」
「何のために?」
「さあ、それはよく分かりませんが、あるいは単に、彼ら誘拐団の威力を示して、警察をからかうつもりだったかもしれません」
「君のところへ電話をかけたり、糸子の死骸の上に君|宛《あ》ての名刺を置いたりしたのも、やはり君をからかうためだったろうか」
「無論そうでしょうが、僕はその点がまだはっきり理解できません。僕をからかうのが不利益であることぐらい、彼らも知っているはずです。だから、僕のところへ電話かけたり、僕|宛《あ》ての名刺を置いたりしたの
前へ
次へ
全44ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング