はあ、訪ねました。ところが、川上糸子は十日ほど前から伊豆山へ行って留守だと留守番の婆やが申しました」
 私たちは思わず顔を見合わせました。
「それでは、あとで話をゆっくり聞くとして、これからすぐ伊豆山の相州屋へ電話をかけて、川上糸子がいるかどうか、もし出立《しゅったつ》したとすると、いつ相州屋を出たか聞いてくれたまえ」
 刑事が奥の方へ去ると、私たちは小田さんの部屋に案内されました。私たちは、椅子に腰かけて、はじめてゆったりした気持ちになりました。警視庁は、普通の人にとっては、気の落ちつかぬところかもしれませんが、私たちは度々ここへ来て、まるで自分の家のような気がしているので、早朝からの気づかれを休めることができました。
 電話の知らせを待つ間、俊夫君はPのおじさんと、今後の捜索の方針などについて語りあっていましたが、私は眼を閉じて、今回の事件について考えてみました。
 が、考えれば考えるほど分からなくなりました。川上糸子の死体が奪われるし、その死体は本当の死体ではなく仮死の状態にすぎなかっただろうというのだし、しかも当の川上糸子は伊豆山《いずさん》へ行っているはずだし、何のことやら、
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