君は罎の表面に貼ってあるレッテルの文字を見ました。それは印刷したレッテルではなくて、西洋紙片に黒インキで、
[#天から4字下げ]Gelsemium
と書かれてありました。すると、それを見た俊夫君の顔には、例の満足の微笑がただよいました。
「これは、たしかに盗賊が落としていったものですか」
「はあ、うちでは色々の化粧水や薬品を使いますから、はじめは、うちの罎かと思いましたが、よく検《しら》べてみると違っております。多分、私たちのどちらかが抵抗したとき、覆面の曲者《くせもの》が落としたものと見えます。ちょうど、私たちの枕もとに転がっておりました」
この時、小田刑事は待ちかねたように、俊夫君に向かって尋ねました。
「その横文字は何という意味かね?」
「これですか、これはゲルセミウムという毒物です。ゲルセミウムという植物の根にある一種のアルカロイドで、アルコールによく溶けます。ストリヒニンと同じく、非常に苦い味を持っていまして、薬剤としては神経痛などに用いられますが、それよりもこの毒は一種の不思議な作用を持っているのです」
「不思議な作用とは?」
「僕は自分で経験したことはないですが、アメ
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