を落ちつけているわけにはゆきません。で、俊夫君はすぐさま用件にかかって、ゆうべ盗賊の入った顛末を尋ねました。
近藤女史と女弟子とが交々《こもごも》語ったところは、電話で俊夫君が聞いたこと以上にこれという注意すべき点もありませんでした。何しろ恐ろしさが先に立って、しかもすぐ麻酔剤を嗅がされたために、盗賊が一人だったか二人だったかさえ記憶しないということでした。いわんや盗賊は覆面していたので、その人相などはさっぱり分からなかったのです。
「何か盗まれはしませんでしたか」
と、俊夫君は尋ねました。
「いいえ、別に何も盗まれはしなかったようでございます。あなたからお電話をいただいたので、方々を検《しら》べましたが、何も失っておりません。それどころか、盗賊は小さなガラス罎《びん》を落としてゆきました」
「え? ガラス罎?」
と、俊夫君は熱心に聞きかえしました。
近藤女史は女弟子に告げて、それを取りにやりました。やがて女弟子は一個の小さな緑色ガラスの罎《びん》をもってきて、俊夫君に渡しました。
俊夫君は、その罎をすかして見ました。中には一滴か二滴の液体が残っているだけでした。それから俊夫
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