呆気《あっけ》にとられた小田刑事を残して、俊夫君は、その紙片をもって次の部屋へ行き、何やらしきりにやっておりましたが、やがて出てきて、小田刑事に渡した紙片の上には、「頭蓋骨」の絵が、赤い色の線で書かれてありました。
「今、ある薬品をかけてあぶりだしたら、こんな絵があらわれたのです。これについて何か心当たりがありませんか」
俊夫君が、こう言い終わらないうちに、小田刑事の顔色は変わりました。
「やっぱり、あいつらの仕業《しわざ》か」
と、小田刑事は吐きだすように言いました。
「え?」
と、俊夫君は、小田刑事の顔を、つよく見つめました。
「実はねえ、俊夫君」
と、小田刑事はいくぶん声をひくめました。
「まだ世間にはむろん知られていないが、この十日ばかり前に、上海《シャンハイ》に根城をもっているある誘拐団が東京へ入りこんだ形跡があるから、注意しろという内報が、警視庁へきたのだよ。その団体のマークがこの赤い線で書いた頭蓋骨で、彼らは内地の女を誘拐しては、不思議な方法で上海《シャンハイ》へ連れてゆくのだ。
その団体は主として内地の人間から成りたっているらしいが、支那人などをも手先に使
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