こう言いながら、俊夫君はこれらの原素の原子量を書きました。どうも実に俊夫君の記憶のよいにはいまさら驚かされます。
「これで、小さいものから順にならべると、H、B、C、N、O、F、P、S、K、A、V、I、W、Uだ、で、
 H…………ア行  B…………カ行  C…………サ行  N…………タ行  O…………ナ行  F…………ハ行  P…………マ行  S…………ヤ行  K…………ラ行  A…………ワ行  V…………ン。
 であるに違いない。してみると、
 Ha[#「Ha」は縦中横]はア、Hi[#「Hi」は縦中横]はイ、Hu[#「Hu」は縦中横]はウ、He[#「He」は縦中横]はエ、Ho[#「Ho」は縦中横]はオ。Ba[#「Ba」は縦中横]はカ、Bi[#「Bi」は縦中横]はキ、Bu[#「Bu」は縦中横]はク、Be[#「Be」は縦中横]はケ、Bo[#「Bo」は縦中横]はコ。
 となるわけだ、いいかね。そこでこの暗号を検査すると、
 So[#「So」は縦中横]はヨ、  Bo[#「Bo」は縦中横]はコ、  Fa[#「Fa」は縦中横]はハ、  Pa[#「Pa」は縦中横]はマ、  Ha[#「Ha」は縦中横]はア、  Ka[#「Ka」は縦中横]はラ、  Aa[#「Aa」は縦中横]はワ、  Ci[#「Ci」は縦中横]はシ、  Ne[#「Ne」は縦中横]はテ、  Hu[#「Hu」は縦中横]はウ、  Ha[#「Ha」は縦中横]はア、  Fe[#「Fe」は縦中横]はヘ、  Vはン、  Bu[#「Bu」は縦中横]はク、  Nu[#「Nu」は縦中横]はツ。
 となる。すなわち、これを書きなおすと、『ヨコハマ、アラワシテウ、アヘンクツ』だ。『横浜、荒鷲町《あらわしちょう》、阿片窟』だ……」
 言い終わって俊夫君は勝ち誇った笑いを浮かべました。私はすっかり度胆を抜かれて、しばらく物が言えませんでしたが、やがて、
「おお、それでは、誘拐団は、横浜の荒鷲町の阿片窟を根城としているのだね?」
 と、尋ねました。
「そうだよ。これで僕の見込みどおりになったわけだ。伊豆山《いずさん》へ来たおかげで、悪漢たちの本城をつきとめることができたのだ。
 この上はもう彼らを逮捕すればよい。兄さん、これからすぐ警視庁へ電話をかけて、Pのおじさんを呼びだしてくれないか」

     二

 さて、読者諸君、これから当然、悪
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