は変態性慾と食人との関係について色々の例を述べて説明しました。恋人を殺してその心臓を切り出し、それを粉砕して、パンの中に焼き込んで食べた男の話などは、いつもならば何ともありませんが、今夜に限って、自分ながら妙な気持になり、外から盗人のようにはいって来るなまぬるい風さえ、血腥《ちなまぐさ》い臭いを持って居るかのように、思われました。
 次に大衆文芸作家K氏の日本文学にあらわれた食人の話があり、それについで、男の方も女の方もそれぞれ、凄い、面白い話をされ、最後にC子さんの番になりました。C子さんは数年前まで看護婦をして居られたのですが、故《ゆえ》あって今はタイピストをして居られます。
「それでは、今度はC子さんに御願い致しましょう」と私が申しますと、C子さんは、何故か先刻《さっき》から二三度|太息《ためいき》をついて居られましたが、この時、決心したように言いました。
「思い切って御話することに致しましょう。実は私が看護婦をやめましたのも、ある御方の食人が動機となったので御座います。でも、この御話は、普通の女の方の前では、何だか、申しにくいところがありますから……」
「いえ、かまいません。ど
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