のポケットをさぐり、本物と贋物とをすりかえてしまったんです」
叔父さんのさっきの怒り顔は、いつの間にかにこにこ顔に変わっていました。
「いやまったく感心した。紅色ダイヤはお前にやる」
と叔父さんは申しました。
「昨日の朝の新聞を切り抜いたのは俺の手ぬかりだったよ。四五日前から気をつけて、何か科学に関した記事はないかと捜していたが、ちょうどあの記事が目についたので、暗号を作ったのさ。暗号に身が入って、うっかりそのことに気がつかず、さっそく電話をかけてお前を呼びよせたのさ。それにしても大野君、随分ひどい目にあわせたね?」
私は穴があれば入りたいような気になりました。
「どうも失礼しました。俊夫君もひどいいたずらをさせたものです」
「だけど、叔父さんをひどい目にあわせることは、あの手紙に書いておいたよ」
「え?」
と叔父さんはびっくりして言いました。
「手紙を持ってきたでしょう?」
叔父さんは、チョッキのポケットから俊夫君が今朝《けさ》出した手紙を取りだしました。
「針で孔のあけてある字を読んでごらんなさい」
叔父さんは手紙を開いて、しばらく電灯の光にすかして読んでいました。
「
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