なったので、自然エドナを快く思わなくなった。
ソムマース家に、こうした不快な空気が漂っていたある日の午後、エドナは夕食の支度のために牛乳を搾《しぼ》りに牛小舎へ行き、家に帰ってその牛乳を、竈《かまど》の上にかけてあったフライ鍋の中へ入れた。彼女はそれで、肉へかける汁を作るつもりであったが、何思ったかそれを中止して再びその牛乳を鑵の中へあけ戻し、冷すために皿場へ置いた。
その夕方、病人は発熱して、頻《しき》りに渇《かつ》を訴えたので、看護婦が牛乳を取りに台所へ行くと、都合よく皿場の上に牛乳の入った鑵があったので、そのまま病室へ持って行って、病人にのませた。ところが、牛乳を鑵からあけてしまうと、彼女は、ふと鑵の底に、緑色をした残渣《ざんさ》のあるに気附いた。彼女はびっくりして、もしや、それがパリス・グリーン Paris Green(植物の害虫を除くための砒素含有の粉末)ではないかと思い、ハリーとエドナの居た室に来て、それを見せ、パリス・グリーンではないかと訊ねた。ハリーは、そうらしいと言ったがエドナは黙っていた。
看護婦の頼みによって早速、かかりつけの医師が呼ばれたが、医師もその緑色
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