ール箱についていたというのですからね。この事件の蔭には恐らく複雑した事情が潜んでおりましょう」
「無論そうでしょう。ですが、それは探偵小説家に考えて貰うことにしましょう。ソムマース夫婦は今では楽しい家庭を作って、平和に暮しているそうです。問題の看護婦は、何でもその後ニューヨークの生活が厭になって、田舎へ引き籠ったとかききました。しかし一ばん貧乏|籖《くじ》をひいたのは、警察医のスチューワート氏でした。誤まった鑑定をしたために、その後すっかり評判が悪くなって、門前|雀羅《じゃくら》を張るようになったそうです。いやだいぶ表て通りも静かになって来ました。これから、あついコーヒーでも一杯のみましょうか……」
[#地付き](初出不明)



底本:「探偵クラブ 人工心臓」国書刊行会
   1994(平成6)年9月20日初版第1刷発行
底本の親本:「趣味の探偵団」黎明社
   1925(大正14)年11月28日初版発行
入力:川山隆
校正:門田裕志
2007年8月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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