うく殺人罪に問われようとしたのである。
          ×       ×       ×
「それにしてもどうしてその緑色の物質が牛乳罐の中に入っていたのでしょう?」と、私は、ブライアン氏が語り終ってから、暫らくして訊ねた。
「それが即ち第二の問題ですよ。私はただ砒素中毒かどうかを鑑定すればよかったのですからそれ以上、捜索も致しませぬでしたが、これが、あなたの好きなオルチー夫人の探偵小説に出て来る『隅の老人』であったなら、すべからく、解説なかるべからずですね。ははははは」[#「」」は底本では「』」]と氏は愉快げに笑った。
「無論そのパリス・グリーンは牛乳をあけたあとで罐の中へ入れたのでしょうから、そこに最も肝要な問題がある訳ですね?」と私は、氏の解釈をきこうと思って訊ねた。
「そうですそうです。嫌疑は当然その看護婦にかからねばなりません。『隅の老人』ならば、主治医と看護婦とを共犯にするかもしれませんよ。何しろ看護婦の指紋が、パリス・グリーンの箱に発見されたというのですから」
「どうもこの事件には不可解な点が多いようです」と私は言った。「看護婦ばかりでなく、ソムマース夫妻の指紋も、ボ
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