血の盃
小酒井不木
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)慄《おのの》く
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)因果|噺《ばなし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#7字下げ]一[#「一」は中見出し]
−−
[#7字下げ]一[#「一」は中見出し]
因果応報は仏教の根本をなす思想であって、私たち日本人も、伝統的にこの因果応報の観念に支配され、悪いことをすれば、必ずそれに対するむくい[#「むくい」に傍点]が来はしないかと、内心ひそかに恐れ慄《おのの》くのが常である。そうした恐怖が一旦人の心に蟠《わだかま》ると、何か悪い出来事が起るまでは、その恐怖心が漸次《ぜんじ》に膨脹して行って、遂にその恐怖心そのものが、怖ろしい出来事を導くに至るものである。他人を殺して後、怖ろしい祟《たたり》を受けるというような例は古来沢山あったが、いずれも良心の苛責によって生じた恐怖心が、その人を導いて、その祟を招くようにしたものといっても敢《あえ》て差支ないと思う。
尤《もっと》も、かような祟は多くは偶然の出来事のように見えるものである
次へ
全16ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング