っぽど悪運につけこまれたんだ。貴様もあきらめてしめえ」と吐き出すようにいいました。
 妙なものです。始めは京山の方があきらめかねて事を企てたのですに、今は、仙波の方があきらめかねるのでした。そうして依然として、寸断の行為《しぐさ》を続けました。
「いい加減にしないか」と京山は声を強めていいました。
 と、その時仙波は何思ったか、怖ろしいものでも見つけたかのように、そのうちの一つの臓器をじっと見つめていましたが、やがて、手に取り上げて見るなり、
「やッ」と叫びました。「これ、貴様、とんでもないものを持って来たな」と、怖ろしい眼をしていいました。
「何だ?」
「こりゃ貴様、子宮だぞ!」
「え?」
「え? もないもんだ。これ、よく聞け、貴様がもってきたのは女のはらわた[#「はらわた」に傍点]だぞ」
「女?」
「そうよ、男に子宮はない」
「だって」
「だってじゃない。女と男と間違える奴があるか。一目でわかるじゃないか」
「でも、顔と局部には白いきれ[#「きれ」に傍点]があててあった」
「髪があるじゃないか、髪が」
「髪はなかったようだ」
「嘘いえ。それに乳房でもわかるじゃないか」
「それが、乳
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