仙波は何となくあわてた様子をして、十二指腸、小腸、大腸、直腸を切り開き、次で、その内容を調べて見ましたがダイヤモンドは姿を見せませんでした。
二人は暫くの間、互いに顔を見合せました。腹立たしさと絶望とのために、二人の顔は急に蒼ざめました。
「ないんだよ、おい!」と、気の早い仙波は額に青い筋を立てていいました。
「ないはずがあるものか」と、京山は、不審そうな顔をしました。
「だってないじゃないか」
「もっと捜して見い。その大きな肝臓とやらの中にはないのか」
「こんなところへ行くものか」
「それじゃ、箕島が、口の中へふくんでいただろうか」
そういえば、そうと考えられぬこともないので、仙波は、
「畜生、また奴に一ぱい食わされたのかな。奴め、どこまでも祟りやがる」
といいながら、あたかも、箕島に復讐するかのように、ナイフをもって、肝臓や脾臓を寸断々々《ずたずた》に切りました。そうして、残った臓器の塊を、あちらこちらにひっくりかえしながら、なおもナイフを突きさすのでした。
「おい、よせよ。無いものは仕方がないじゃあないか。俺はもうあきらめたよ。折角貴様の力でここまでやって来たが、こんどはよ
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