妙にしていたよ。それにしても切出しは随分長くかかったもんだ」
「俺も本当に気が気でなかった。……時にぼつぼつダイヤモンドの取り出しにかかろうか。これからは、貴様の仕事だぞ」と、京山は促すようにいいました。
「よし来た」こういって、仙波は新聞紙を解きにかかりました。解いて行くにつれ、生々しい血潮のしみ[#「しみ」に傍点]があらわれましたので京山は妙な気分になりましたが、仙波は平気の平左で手ぎわよくあしらって行きました。
やがて比較的乾いた内臓があらわれました。
「これが脾臓《ひぞう》で、これが肝臓だ。こいつが馬鹿に重いんだよ。これが胃で、この中にダイヤモンドがあるはずだ」
こういって彼は、指をもって胃袋の上面を触れました。
「ダイヤモンドは外からさわって見てもわかるはずだ」
暫くさわっていましたが、
「おや、おかしいぞ!」といいました。この言葉に、京山も思わず全身を緊張させて仙波の血に染った指の先を見つめました。
「おい、鋏《はさみ》とナイフを取ってくれ」と仙波がいいましたので、京山がそれを渡すと、手早く仙波は胃袋を切り開きました。
「無い。腸の方へ行ったのかしら」
こういって、
前へ
次へ
全25ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング