たしの想像をお話ししてみましょうか。すなわちわたしはこう想像したのです。初め三回は単なるマラリアの発作で、四回めのみが亜砒酸中毒を合併したのであると。わかりましたか。そうすると、だれかが初め三回の発作を利用し、四回めに亜砒酸を患者に与え毒殺し、罪を健吉くんに帰するように計画をしたのではないかという考えが浮かんできます。したがって、その人は健吉くんに恨みを抱いているか、または健吉くんを亡きものにして利益を得ようとする者でなくてはなりません。そこで当然考えられることは、二男の保一くんのその日の行動であります」
 さっきから検事の言葉を異様の緊張をもって聞いていたらしい山本医師は、この時、ほっと安心したような様子をした。
「すでに申し上げたとおり」
 と、検事は山本医師を流し目に見て言葉を続けた。
「二男の保一くんは久しく奥田家の出入りを禁じられていたのですが、令嬢からの手紙によって、兄の行動と母の病気とがなんとなく関係のあるらしいことを知り、二十九日の朝、兄が出かけたすぐあとへ忍び込んだのでした。その時、保一くんはどういう心をもって訪ねてきたのでしょうか。親子の愛情によって、母を保護するた
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