怪談綺談
小酒井不木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)伽婢子《おとぎぼうこ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)極力|諫《いさ》めて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)すけ[#「すけ」に傍点]に
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はしがき
伽婢子《おとぎぼうこ》の昔から日本も随分怪談に恵まれているが、その話は多くは似たり寄ったりで、事実談として紹介されているものも大抵千遍一律である。で、私はこれから西洋の文献を探していささか変ったところを紹介しようと思う。
恐ろしい額
ガリチアの山奥に美しい古い城がある。これはその地方を統轄しているラ伯爵の居城であって、伯爵には子供がなく、姪のアグニスを引き取って養女とした。
この城は古風な作りで伯爵の居間と、子供部屋とは大きな広間でへだてられ、あちらこちら往来するにはどうしてもその広間を通らねばならなかった。もしその広間を通らないようにするならば、一たん庭へ出て戸外を歩くより外はなかったのである。
さてアグニスが伯爵の養女となったのは六歳の時だったが、彼女はその広間
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