中も、真っ暗闇に包まれてしまいました。
 それから先、何事が起こったかは読者諸君の想像に任せます。悪漢のうちのある者は家の中で、ある者は逃げだしたところを、はげしい格闘の後、張り込みの警官たちの手で捕縛されました。私も人々の間にまじって一臂《いちび》の力を揮《ふる》い一人の悪漢を捩《ね》じあげましたが、よく見るとそれは皮肉にも竹内だったのです。
 約三十分の後、総計八人の悪漢は護送自動車の中に積みこまれました。小田刑事はうれしそうな顔をして、
「俊夫君どうも有り難う。この中には、警視庁で数年来行方を捜していた、稀代《きだい》の貴金属盗賊がいるよ。いずれゆっくりお礼にゆく。君たちは、あそこの自動車で帰ってくれたまえ」
 と言いながら、護送自動車に乗って去りました。
 木村さんは白金を溶かした「お茶」が流れてしまったので、あまり嬉しそうな顔はしていませんでした。やがて俊夫君は木村さんを自動車のそばに引っ張っていって、
「さあ、木村のおじさん、約束どおり白金を取りかえしてあげました」
 と言いながら、木村さんの手に白く光る塊を渡しました。
「やっ」
 と言いながら木村さんは、つかむように受け
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