嘲《あざけ》っているけれども、彼自身はやっぱり、ヂュパンと同じような性質を持ちヂュパンと同じ遣《や》り方によって事件を解決しているのである。実際、シャーロック・ホームズを創造したコーナン・ドイル自身が、「探偵小説作家は、必ずポオの足痕《あしあと》を踏んで行かねばならぬ」と言っているのを見ても、後世の探偵小説家の描く探偵は、畢竟《ひっきょう》、ヂュパンの型を受け継ぐことになるであろう。
探偵は観察力が非常に優れねばならない。探偵は推理分析の力が異常に発達しなければならない。探偵は変装に巧みであらねばならない。……こんなことを今更、物珍らしく書いていては、本誌の読者に笑われるかも知れないが、とにかく、これらの資格をヂュパンは完全に備えているのである。ヂュパンに次《つい》で出たガボリオーのルコックはヂュパンよりも変装が巧みであるかも知れない。更にその次に出たシャーロック・ホームズはヂュパンよりも、推理観察の力がすぐれているかも知れない。しかしそれは程度の問題であるに過ぎない。ポオは僅かにヂュパンの出て来る短篇小説を三つ書いただけであるのに、シャーロック・ホームズの出て来る小説は、長短数十篇
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