たのとまったく正反対の結果をもたらしました。すなわち彼女は、わたしの言葉を聞くなり、
「そーれご覧なさい。先生にも、わたしのお腹に宿っているのがメデューサの首であることがわかっているではありませんか。わたしがメデューサの首を孕《はら》んでいるということをわたしに言いたくないので、勝手にそんな病気の名前を拵《こしら》えて、わたしをごまかそうとなさるのでしょう。どうか先生、本当のことをおっしゃってください」
 彼女はまったく真面目でした。わたしはむしろ呆《あき》れるよりも気の毒になってきました。いったい、どうして彼女はそうした頑固な妄想を得たのであろうか。素人として自分の腹壁の血管を見ただけで、はたしてメデューサの首だと連想し得るものであろうか。いやいや、これには必ず何か深い理由《わけ》があるに違いない。彼女のこの妄想を除くには、まずその原因を知らねばならない。こう考えてわたしは、
「いったい、あなたはなぜメデューサの首を妊娠したのだと信ずるのですか。人間がそんな怪物を孕むということは絶対にあり得ないではありませぬか」
 と訊ねました。
 これを聞くと彼女は悲しそうな表情をしました。
「あ
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