ポオとルヴェル
小酒井不木

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)狂者《きちがい》

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 私の一番好きな探偵小説は、短篇ではやはりポオとルヴェルである。ポオの作品のうち、探偵ヂュパンの出て来る三つの物語は勿論であるが、その外に、
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The Black Cat.
The Cask of Amontillado.
The Fall of the House of Usher.
The Gold−Bug.
Hop−Frog.
Mesmeric Revelation.
The Oblong Box.
The Masque of Red Death.
The Premature Burial.
System of Dr. Tarr and Professor Fether.
The Tell−Tale Heart.
"Thou art the man."
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など、いつ読んでも、読むたんびに新らしい感興が湧く。System of Dr. Tarr and Prof. Fether. の最後の部分の狂者《きちがい》たちの行動の描写に至っては、面白いというよりも自然と頭がさがるのを覚える。いずれ私は「犯罪文学研究」の中に、私のポオ論を書くつもりであるが、私はいつもポオより後の時代に生れたことを喜んでいるのである。
 ルヴェルの作品では、今一々数えあげるの煩《はん》を避けるが、一つとしてうれしくないものはない。私はルヴェルの書くような小説を自分でも書いて見たいという年来の希望であるが、彼の作品を読むと、自分自身の筆があまりに見すぼらしくなって、穴へでもはいりたくなるくらいである。
 次に短篇ではチェスタトンが好きである。最もチェスタトンの英語は、どういうものかポオの英語のように、私に迫って来ない。これは勿論私の英語の力が足らぬためでもあろうから「不足」はいえぬが、とにかく、師父ブラウンの出て来る短篇と The man who knew too much. に収められた作品は、何ともいえぬ、いい味がある。
 次には、ダヴィソン・ポーストやビーストンの作品が、私にとって頗《すこぶ》るうれしいものである。ビーストンの作品を読むときは
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