りに、短い紐によって重い石が附けられてあった。彼女は彼女の衣服から引き裂かれた布片《きれ》で絞殺され、両腕のまわりに紐の跡がはっきり附いていた。両手には薄色のキッドの手袋をはめ、ボンネットは、リボンによって頸《くび》にひっかかっていた。そうして衣服全体が甚だしく乱れ且つ引き裂かれてあった。
八月六日、トリビューン紙は二度目の報知を掲げた。
「ロオジャース嬢殺害事件は日に日に人々の興味を喚起しつつある。……一週間を経るもなお犯人は不明であって、警察は躍起になって活動しているけれど、もはや遅過ぎる感がないでもない。市長は自ら賞を懸ける前にニュー・ジャーセー州知事の懸賞を待っているとの噂があるが、それは誤聞であるらしい。……失踪当日の日曜日にホボーケンで彼女を見た人はないか? もし警察へ告げてかかり合いになることを恐れている人があるならば、新聞社へ手紙を送って貰いたい」
けれども、これに対して何人《なんぴと》も返事するものはなかった。八月十一日、彼女と婚約の間柄なるペインは、判事パーカーに警察へ呼出されて長時間の訊問を受けたが、犯人の手がかりは少しも得られなかった。トリビューン紙はこのこ
前へ
次へ
全34ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング