は広告をしてまでその行方をたずねることになった。けれども、何処《どこ》からも何の知らせもなかったが、水曜日に至ってルーサーという人と他の二名の紳士が帆船でホボーケンのキャスル・ポイントに近いシヴィル洞孔を通過しつつあった時、水中に若い女の死骸のあることを発見し、大に驚いて、とりあえず河岸《かし》に運んで届け出たところ、直ちに審問が行われ、その結果、件の死骸はロオジャース嬢のそれとわかった。彼女はむごたらしい暴行を加えられた後殺されたもので、『未知の人又は人々による他殺』なる宣言が下された。彼女は善良な性質の娘で近くこの市の某青年と結婚する筈であった。聞くところによると、殺害が行われてから行方を晦《くら》ましたある青年に嫌疑がかかっているとの事である」
この記事の始めにある、彼女が町角である青年と逢って共にホボーケンへ行こうとしたということは、かかる殺人事件に伴い易い単なる風説に過ぎなかったのであって、その後二度と新聞に繰返されなかった。バーンスの著書は多分警察の記録に従って書かれたものらしいのであるが、それによって発見当時の死骸の状態を述べると、彼女の顔は甚だしく傷害を受け、腰のまわ
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