……けれども死体をどうにか始末する必要があるのだ。彼は他の証拠物はうっちゃっておいて死体を河ぶちまで運んで行く。――ところが一生懸命に骨を折って死体を河まで運んで行く間に、心の中で恐怖は益々募って来る。……どんな結果になろうとも、彼は断じて引き返せないのだ。彼のただ一つの考はすぐに逃げ出すことだ。……」
と書いて犯人の一人説を主張し、併せてその犯人の行動をも推定しているのである。そうしてなお、死体の上衣《うわぎ》から、幅一|呎《フィート》ばかりの布片《きれ》が裾から腰の辺まで裂いて、腰のまわりにぐるぐると三重に巻きつけて、背部でちょっと結んでとめてあったことを、犯人が一人であったために死体を運ぶための把持とされた証拠だと述べているのである。
しかし、ここに於て、ポオは、実は一つの論理的矛盾に陥っているのである。何となれば彼は、叢林の中に残された品物が三四週間も発見されずにあるということは考えられないから、それらの品物は、兇行の現場からわきへ注意をそらそうという目的で、わざと叢林の中へ置かれたものだろうと推定して置きながら、(小説参照)前記の文中には、その場所を兇行の現場と認め、なお
前へ
次へ
全34ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング