と書いているのも少々おかしいように思われる。海軍士官のことがもし周知であるならば、メリーの母親の知らぬ訳はなく、従って母親を訊問した警察の記録には載っている筈で、それを調べた筈のバーンスの著書には当然書かれていなければならぬのに、その記述はないのである。
最後に、メリーが何処で殺されたかの問題も、知れている事実だけから推定してこれを解決することは頗る困難である。しかし、メリーの死体がハドソン河から発見されたことは、ハドソン河の近くで殺害の行われたことを想像するに難くはない。現今ならばメリーの衣服に着いている塵埃や草の葉の破片などから、それを顕微鏡的に検査することによって兇行の場所を推定することが出来るであろうけれども、当時は常識的に判断するより他はなかった。もしウィーハウケン(小説ではルール関門)の近くで認められたという女がメリーであったならば、兇行はやはりその附近で行われたものとするのが、常識的に見て当然のことである。
そこで今度はメリーが一人の男に殺されたのか又は一団の悪漢たちに殺されたかという問題が起って来る。何となればメリーは六人のものと一しょだったという見証と、色の浅黒い
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