、諸君に宜しく言つてくれとの話しで、相変らず元気であつた、二十五分ばかり、用談をして辞し帰つた、帰りの汽車は、何となく不愉快で、此夜は枯川の夢ばかり見た。
平民社の出版の方は、幸ひに着々歩を進めて来た、『百年後の新社会』は既に再版に着手して、『社会主義入門』も大部分は売れた、新に発行した『火の柱』も既に続々注文がある、商売としては元より言ふに足らぬのであるが、兎に角今の激烈なる戦争熱でも、決して日本の社会主義的思想を焼き尽し得ないことを証する者ではないか。
本月中に出版の手筈になつて居るのは、安部君の『瑞西』の外に石川生の『消費組合の話』である、消費組合が労働者の救済に於て、極めて有功で、殊に今日の如き不景気の時に於て極めて急要なることは、石川生が本号の論文に記せし如くである、我等は此書が、今日憂世の諸君子の為めに多大な参考となるを疑はぬのである。
去八日、戦捷祝賀の行列で、八百八衙、万歳の響、軍歌の声、怒濤狂瀾の押寄するが如き中で、平民社の楼上には静かに婦人講演と社会主義研究会とが開かれた。戸外の怒濤狂瀾は多くの人を殺してそして直ぐに消へ去つた、微なる平民社楼上の会合の結果は決
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