は元利合計で、二百二十八円と四十六銭じゃ」
「よし」
友木は懐中から紙幣束を引摺り出して、覚束《おぼつか》ない手つきで数え始めた。
「さあ、ここに二百三十円ある」
「夢じゃないかいな。生命を取られるかと思うたら、金を返えして貰えるなんて、こんな有難い事はないて。油断さして置いて、又、短刀でブスリとやる積りじゃないか」
「黙れ。愚図々々云わないで早く受取れ」
「何や、気味が悪いな」
玉島は恐々《おそるおそる》紙幣を受取って、馴れた手つきで数えた。そうして、友木が全く金を返えして、別に害心のない様子を見て取ると、今までの悄気《しょげ》た様子はどこへやら、急に顔を輝やかして、ホクホクし出した。
「確かにあります。待って下さい。今おつりを出すさかいにな」
「剰金《つり》なんかいらん。取っとけ」
「えッ、それはほんまかいな」玉島は仰天しながら、「友木はん、あんたは貧乏してても、どことなく他の人と違うと思ったが、やっぱり豪《えら》い。感心なものや」
「黙れ」友木は一喝した。「それでもう云う事はないか」
「何にも云う事はおまへん。お礼しますがな」
玉島はペコンと頭を下げた。
「よしッ。それでは
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